交通事故で加害者はどんな刑事処分を覚悟するべきか?

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交通事故の加害者は被害者に対しての損害賠償だけでなく、場合によっては刑事処分を受けるケースがあります。裁判になり解決まで時間がかかることもあれば、被害者が納得しない程度の処分で済んでしまうこともあるでしょう。

ではどのような場合に交通事故で加害者は刑事処分を受けるのか、詳しい内容についてご説明いたします。一瞬の不注意で人生を棒に振ってしまうケースはあちこちにあります。車のハンドルを握る時は事故の当事者になるリスクを考えて、いつも注意深く運転をしないといけません。

 

加害者が受ける可能性がある刑事処分について

交通事故で加害者が刑事処分される場合、基本的には刑法や道路交通法、自動車運転処罰法などが元になり処分されています。

刑事処分は大きく分けると罰金と懲役もしくは禁固刑があります。罰金は事故の状況に異なりますが金額的には10万円以上になります。もし罰金の納付をしない場合は身柄を拘束されるケースもあります。

 

ちなみにこの罰金については「交通違反の反則金と同じ」と勘違いしている人もいるようです。車を運転する人ならきっと多くの人が体験している交通違反の反則金ですが、これは罰金とは異なり行政罰で刑事罰にはなりません。

また、交通違反の反則金支払い命令は前科は伴いませんが、交通事故の罰金支払い命令に伴い刑事罰もあわさるため前科がつきます。懲役や禁固は交通事故の状況により拘置される期間が違い、懲役は一定の作業を命じられ禁固刑は作業の必要がありません。

またそれぞれに執行猶予が付く場合もあり、その期間に犯罪を起こさなければ刑が無効になるという仕組みです。執行猶予判決の場合ももちろん前科がつき再び刑事罰を受けることがあれば、前科があると不利になるでしょう。

 

刑事処分の種類について

交通事故で加害者が受ける刑事処分、その元となる法律や罰則の種類について重要なものをご説明します。

 

・危険運転致死傷罪

自動車運転処罰法の5条に規定されているものです。車やバイクなどの車両を運転している最中に、運転者が注意を怠り人が死亡、または受傷させた場合に適用されます。

危険な行為として判断されるものは飲酒により正常な運転ができない場合です。技能不足の運転の場合で罰則は15年以下の懲役もしくは1年以上の有期懲役となります。アルコールまたは薬物の影響で正常な運転に支障が生じる場合の運転をして相手が受傷した場合、12年以下の懲役、死亡の場合は15年以下の懲役となります。

他にも危険運転に該当するものとして、「運転に支障あると政令が定めた病気」の影響で運転に支障が生じる場合や、「制御困難なスピードでの運転」「スピード運転で信号無視」「通行禁止区域での高速運転」などがあります。

 

・過失運転致死傷罪

前方不注意やスピード違反、脇見運転など運転者が本来行うべき通常の注意を払わずに交通事故で人を死傷させた場合に適用されるものです。

罰則は7年以下の懲役もしくは禁固、または100万円以下の罰金刑。かつては刑法211条で処罰されていたのですが、量刑が軽いために刑罰の内容が引き上げられています。

ちなみに昔は「危険運転致死傷罪」しかありませんでした。しかし「危険運転致死傷罪」は刑罰が重いかわりに証拠を厳密に揃えなければならず、犯罪を立証することが難しかった時代がありました。

本来であれば罰せられない悪質な運転者が野放しになったことから、国は少し刑罰が軽く立証しやすい「過失運転致死傷罪」を制定し、悪質な運転者への罰則適用を行った経緯があります。

 

・過失致傷罪と過失致死罪

車ではなく自転車が加害者の場合に適用されるものが過失致傷罪と過失致死罪です。過失致傷罪の刑罰は30万円以下の罰金、過失致死罪の場合は50万円以下の罰金です。

 

・その他の罰則

他にも交通事故で加害者が行うべき行為である道路上の危険の除去や、負傷者の救護、運転の停止、警察への報告などを怠った場合は緊急措置義務違反が適用され、罰則として5年以下の懲役または50万円以下の罰金があります。

また被害者を傷つける意図があり交通事故をおこし被害者が死亡した場合は殺人罪、同様に傷つける意図で被害者が傷害を受けた場合は傷害罪が適用されます。

 

物損事故は犯罪として成立しない

交通事故は車の接触から人身事故まで状況はそれぞれのケースで異なります。加害者が刑事処分を受けるのは被害者が死傷した場合で、車の傷や故障などでは犯罪として成立はしません。

そのため物損事故では被害者がどれほど不快な思いをしても、加害者に刑事罰を与えることはできないのです。

 

事故から加害者が刑事処分されるまでの流れ

交通事故で加害者が刑事処分されるまでの流れです。まず知っておきたいことは起訴する権限は検察官にしか認められていないため、被害者が刑事裁判を起こすことはできません。

被害者の怒りのあまり「裁判してやる!逮捕させて刑務所に打ち込んでやる!」と言い放つ場面もあるでしょう。しかし「逮捕、刑務所入り」を決めることができる刑事裁判は被害者では起こすことはできないのです。

加害者が起こすことができる裁判は民事裁判となります。民事裁判は「損害賠償を求めるなどお金に関する罰則」を加害者に与えることができます。ちなみに民事裁判の判断材料として、刑事裁判の結果も使われるため、刑事裁判の後に民事裁判を起こすことがよくあるようです。

 

事故が発生した後は、警察が現場で事情聴取や実況見分を行い、それをもとに供述調書を作成します。検察庁は加害者に供述調書の内容を確認し、取り調べが終了次第、検察官が起訴するか不起訴にするか決定します。

起訴というのは刑事裁判をおこすことを裁判所に対して申請するもの。起訴された場合は刑事裁判を行い、略式命令の請求の場合は罰金の処分になります。

 

悪質な交通事故の場合は裁判で審理され被告人が在廷で判決の言い渡しになり 懲役や禁固などの罰則が与えられます。

 

刑事手続きの落とし穴について

交通事故の加害者の態度によっては、被害者は強い処罰感情を抱くこともありますよね。しかし注意したいのは刑事手続きになり加害者が起訴されても重い罰則が下るとは限らないのです。

交通事故の件数はとても多く人身事故をすべて起訴して処理する余裕がないという背景もあり、起訴されても略式手続きで終わってしまうケースが多くなっています。この場合は加害者が期限内に罰金を納付すれが刑事手続きは終了となってしまうのです。

しかし重大なひき逃げや飲酒運転などは公判が開かれる可能性は高くなります。こうなると社会的に名前が出ていくことから、社会的罰則を与えることはできるでしょう。

被害者ができること

被害者の感情が無視されて不起訴になるケースや、罰金だけで済んでしまう場合など色々あります。

交通事故で加害者が受けるべき刑事処分が下されるためには、刑事手続きに入り略式手続きが決定する前に被害者がアクションを起こすことが必要なのです。上申書の提出や検事と面会するなど、このような行動を起こす為には交通事故に強い弁護士のサポートが不可欠といえるでしょう。

一般的な刑事事件は被疑者が逮捕されてすぐに略式手続きが決定することもありますが、交通事故は在宅捜査なので時間が多少かかります。被害者の気持ちだけでは検察が期待通りに動いてはくれませんので、まずは交通事故にあったら弁護士に相談し今後の正しい対処を考えましょう。

 

まとめ

交通事故の加害者への刑事処分は色々な法律や規則がベースになっていますが、示談すると加害者の刑が軽くなってしまう可能性があります。

刑事処分を望む場合は、刑事裁判が終了するまでは示談しないほうが被害者にとっては有利になるでしょう。複雑な手続きやステップを踏むにはストレスも多く、被害者にとっては弁護士のサポートがとてもありがたく思えるはずです。

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